■ プラモ選び
第三回の今回は、初心者が艦船プラモを選ぶ上でのポイントについて解説したいと思います。管理人もいまだ入門段階であり、数をこなしているわけではないので、ネットでの聞きかじりと、独断と偏見になることはあらかじめご了承ください。



■ 艦船プラモの基礎用語
具体的に作りたい艦が決まっている場合でも、艦船プラモは複数の会社から発売されるものも多く、商品を選ぶ上ではある程度の知識が必要になります。まず最初にその用語について解説します。

ウォーターライン(WL)とは?
本来は「喫水線」の意味で、艦船プラモにおいては「洋上で、海面より上にある、見えている部分だけ」のモデルです。「洋上モデル」とも呼ばれます。

「ウォーターラインシリーズ」は複数メーカーが参加する共通規格の1/700モデルのシリーズとして、艦船プラモ業界のメイン商品になっています()。なお、同様の規格をフジミ社は「シーウェイモデル」という独自名称で商品化、シリーズ化しています。

また、艦底部分を含めた艦の全体を再現したモデルを「フルハル(モデル)」と呼んで区別します。キットの中には洋上モデルとフルハルモデルのどちらかを選択できるものもあります。

ウォーターラインシリーズの特徴は
・ ラインナップが豊富で、手ごろな大きさのためコレクション向き
 ※逆にWLでしか商品化されていない艦も多い
・ 史実の艦隊編成を再現して並べたりしやすい
・ 青や緑のシートや、海面を模した板の上におくだけで簡単なジオラマになる
・ 底が平面なので転倒しにくい(扶桑型戦艦はあぶないかもしれません!)
・ 艦艇部が無い分、パーツ数が少なく作成がちょっとだけ楽(特に塗装)
・ パーツ数が少ないこともあり若干、価格がお安い
ということで、入門用として必ず勧められ、初級者から上級者までに愛されている定番シリーズです。特にこだわりが無ければWLシリーズを選ぶことをオススメします。

 厳密には洋上モデル=ウォーターラインモデルであり、「静岡模型教材協同組合に加盟する3メーカーが販売する1/700の洋上モデルのシリーズ」が「ウォーターラインシリーズ」です。フジミ社もかつて加盟していたことや、解りやすい名称であることなどから、その呼称は一般化しており、非加盟メーカーの洋上モデルも一緒くたに「ウォーターライン」と呼ばれます。

1/700とか1/350ってなに?
実際の艦船の大きさを基準とした模型のサイズを分数で示すもので、スケール(縮尺)といいます。

例:「元の大きさが210mで、スケールが1/200のプラモデル」の実際の大きさは210m × 1/200 = 1.05m(105cm)となります。


数値が小さい(=分母が大きい)ものほど、実際の大きさは小さくなります。
艦船プラモデルの世界では、以下の2つのスケールが主流です。

1/700
安価な小型サイズでコレクション向き。前述のウォーターラインシリーズはすべてこのスケールです。

1/350
大きめのサイズ。お値段もやや高め。大きいから作りやすいか、と言えばそうではなく、大きくなった分1/700では再現できないような細かい部位も再現しており、パーツ数は大幅に増えます。また、このスケールは基本的にフルハルモデルということもあり、「やや上級者向け」という扱いです。

【サイズ比較】
実寸1/3501/700
大和型戦艦、赤城、翔鶴型空母約260m約76cm約38cm
正規空母約230m約66cm約33cm
戦艦約210m約60cm約30cm
重巡洋艦、軽空母約200m約56cm約28cm
軽巡洋艦、龍驤、鳳翔約170m約48cm約24cm
駆逐艦約110m約32cm約16cm
※完成後に「飾る場所」も考えたうえで購入検討することをオススメします

この二つ以外にも「1/200」という超巨大モデルや、「ノンスケール」という実際の大きさを基準にしないモデルもあります。ノンスケールは完成品に多く、過去には「30cmシリーズ(ニチモ社)」と呼ばれる初心者(子供)向けのシリーズも発売されていたようです(現在は生産されておらず、市場在庫のみ)。

「雪風1945」とか「扶桑1944」の数字ってなに?
「1945年当時の姿」「1944年当時の姿」という意味です。この時代の艦船は竣工後もさまざまな事情により改装され、姿を変えています(艦これの「改装」と同じものです)。そのため「そのキットが何年当時の姿を再現したもの」か、商品名でわかるよう艦名のあとに年数をいれているものもあります。同じメーカーが同じ艦を複数商品化した際、区別のために後に発売されたものにつけられることが多いようです。
例:
先に発売された アオシマ社の「1/700 那珂」は1943年(開戦時)の姿。
後に発売された 同社の「1/700 那珂1933」 は1933年(竣工時)の姿を
それぞれ再現しています。
商品名に記載がないものは、商品解説などを参照することで何年当時の姿かを確認できます(無いものもあります)。また、キットによっては改装前と改装後の双方の部品が同梱され、好きな方を選べるものもあります。

エッチングパーツってなに?
薄い金属板をエッチングという処理で加工して作られる金属パーツです。いやらしいパーツではありません。プラスチックでは不可能な非常に細かい部品も作れるため、より精密なモデルとして仕上げるために使用されます。当然、取り扱いも精細を極め、金属なので接着や塗装もプラスチックとは別の扱いとなり、さらにお値段も多少張るので不慣れなうちは手を出さないほうがいいかと思います。

また、エッチングパーツ以外にも金属パーツも存在します。いずれも中級者以上向けだと思ってください。これらは基本的にオプションパーツとして別売りされるものですが、まれに限定版や特別版などのパッケージには同梱されていたりもします。

なお、「艦これモデル」に付属しているエッチングパーツは、艦船用の部品ではなく、独立した飾りとして使うものです。いやらしい使い方はできません


■ 作りやすい艦船プラモ
自分が下調べをしている際に「初心者でも作りやすい艦船プラモってありますか?」という質問をたまにみかけましたが、前述した通り、艦船プラモには明確に「初心者向け」として作られているキットは現在ありません。そのため、たとえ初心者であろうとも中級者や上級者が作るのと同じキットに触れることは避けられません。

それでも比較的、初心者にも向いているキットの条件(あるいは向いていないもの)としてよく挙げられていたものを以下に紹介したいと思います。

小型のもの
艦船プラモは大型のスケール(1/350など)や大型艦になればなるほど部品数がうなぎのぼりに増えていきます。部品数が増えれば増えるほど作成工程も手間も、完成までに要する時間も増えます。そういう意味では「小型のスケール、小型艦船ほど作りやすい」ということになります。

そのため、初心者には「ウォーターラインシリーズ(1/700)の駆逐艦」がオススメとされることが多いようです。価格もお手軽なので「自分に向いているかどうかのお試し」と割り切る場合は断然、駆逐艦だと思います。駆逐艦といえど、細かい部品を大量に組み込み立体を作り上げる艦船プラモの楽しみ、そして難しさは十分に味わえます。上級者が作りこんだ作品は、決して戦艦や正規空母にも負けぬ迫力を感じさせるものです。「たかが駆逐艦」と侮ってはいけません。「極めればどこまでも深く、でも初心者には優しい」。ここらへんは「艦これ」の駆逐艦と同じです。

逆に空母は「パーツ数が非常に多い」「塗装が難しい」などの理由から初心者には難しいキットとして挙げられていました。

発売年が最近のもの

一般的に「発売年が最近のものほど作りやすい」とされているようです。というのも、艦船プラモは30年以上前の製品が現在も生産、販売されています。良いものだからこそ今も売られているのですが、古いキットは製造当時の技術的な問題や、設計上の都合、さらに金型(プラモを作る際に使われる鋳型)が長年の使用により劣化しており、パーツが歪んで上手く噛みあわなかったり、凸凹があったりといった「成型不良」が起こりやすいようです。これに対応できるプラモデル作成技術がある人ならさほど問題にはなりませんが、初心者にとっては大きな障害ともなりえます。


現在発売されている唯一の「駆逐艦 島風」のキット(タミヤ製)。発売年はなんと1972年!

そういったリスクが少ない分、「新しいものほど良い」ということになります。ただし、技術進歩により「より細かい造形」が可能になったため、新しいキットには細かい部品や模様が多く、必ずしも「新しい=万人にとって作りやすい」とは限らないのであしからず。なお、細かいパーツは「使わない」「後回しにする」「慣れてから取り付ける」でも別に良いと思います。
余談。
作りやすさとは別の話ですが、艦船研究の世界では年々、新しい資料、記録、記述が発見され、そのたびに船体や艤装の形状、位置の解釈が「実際の姿により近いもの」へと更新されています。これらの研究成果は艦船プラモにも反映されるため「新しいキットほど新しい解釈に近いもの」となります。
メーカーによる違い
フジミ社やピットロード社(両者とも現在、静岡模型教材協同組合には加盟していない)は製品の精密さを評価されています。つまり、それだけ「繊細で取り扱いが難しい部品」を多く含み、「パーツ総数も多い」ということになります。そういう意味では初心者には少々荷が重いキット、と言えます。値段も若干張ります。しかし、この二社は小型艦船のラインナップが充実しており、本格的に艦船プラモを楽し上では避けては通れない、むしろすすんで挑戦して行きたいメーカーさんだと思います。


■ 最初に何を作るべきか
いろいろと述べてきましたが、基本的には「作りたいものを作ればいい」と思います。その場合でも、どのメーカーのどのキットに挑戦するかを判断する上で、ここまで書いてきたことが多少なりとも役に立てば幸いです。

「艦これ」の艦娘が好きだからという理由で選んでもいいと思いますし、実際の艦の姿が気に入ったからでもいいと思います。ただ、艦娘がきっかけで実際の艦が好きになったように、プラモデルを作ったことでいままで興味がなかった艦娘が好きになる、ということも実に楽しいと思います。そういう意味では「艦これ」にこだわること無く選んでもらいたいと思いますし、ひとりでも多くの方が「完成」までたどり着き、リアル建造した艦の姿を一目見て欲しいと思っています。

以下に「艦船プラモ作りに向いているかどうかを確かめるためのお試し」として、随所でオススメされていたWLの駆逐艦キットを2点紹介します。

アオシマ 1/700 ウォーターラインシリーズ No.442 日本駆逐艦 陽炎1941
定価1,050円。2004年発売。
アオシマの1/700 陽炎型駆逐艦は「No.442 陽炎」「No.444 雪風」「No.445 秋雲」「No.447 舞風」(艦これ実装艦のみ)が発売されています。

これらは同じ陽炎型駆逐艦ですが、
陽炎(1941年) 艦首に主砲x1、艦尾に主砲x2
秋雲、舞風(1942年) 艦首に主砲x1+対空機銃x1、艦尾に主砲x2
雪風(1945年) 艦首に主砲x1+対空機銃x1、艦尾に主砲x1+対空機銃x2
とキットごとに竣工年や時期の違いにより装備が異なります。また、2013年12月には艦娘のカードや飾り用エッチングパーツ、シールなどを同梱した「艦これモデル 雪風」が発売されます。ただし通常の雪風1945が定価1,050円に対し、艦これ雪風は定価2,310円なのでおまけに興味が無ければ、通常版でいいかと思います。

アオシマ 1/700 ウォーターラインシリーズ No.454 日本駆逐艦 初春 1933
定価1,260円。2011年発売。
アオシマの1/700初春型駆逐艦は「No.454 初春1933」「No.455 子日」「No.456 初霜」「No.457 初春1941」が発売されています。

「初春1933」「子日」は艦首に主砲2基を装備した竣工時の姿を、「初霜」「初春1941」はそれぞれ1945年(沖縄水上特攻作戦時)と、1941年(開戦時)当時の改修後の姿を再現したキットです。これらのキットにはスーパーディティール(SD)限定版として、エッチングパーツが付属したパッケージもあるので購入の際は気をつけて下さい。また、No.418の初春は旧キットになります。

特に「初春1933」と「子日」(竣工時)は、艦首の主砲二基をはじめ、その小さな艦体に積めるだけの武装を詰め込み、重巡と見間違えるほどの(言いすぎ)重厚な艦橋部と、アンバランスながらも実に個性的で攻撃的な姿が子供心をくすぐります。そりゃ転覆しかけるよね!管理人も次(3隻目)に作るのはこの子と決めています。

自分が作りたい艦がキット化されていない場合は…?
史実に存在したすべての艦船がキット化されている訳ではありません。特に駆逐艦は数が多いため、お目当ての艦娘のキットが無いということもあるかと思います。そういった艦をどうしても作りたい場合は「資料を集め、キット化されている姉妹艦との違いを調べた上で改造する」ことになります。

敷居が高そうに思われるかもしれませんが「調べて見たら、姉妹艦とほとんど違いはなかった」という場合も多々あります。また、キットの中にはあらかじめ姉妹艦への改造に対応しているもの(姉妹艦用の部品やシールが同梱されている)もあるのであきらめないで下さい。

なお、販売されているキットでも細かい部分が間違っていることもよくあるようです。なので、外見に大差の無い姉妹艦の場合、例えばそれが「陽炎」として売られているキットであっても、「イヌラシ」と書いてしまえば不知火になりますし、極論すれば貴方が不知火として作ったのなら何も書かなくても、それは不知火になります(※)。初心者のうちはそれで良いと思います。

※ そもそも戦時は艦名や番号を消していたそうです

(2017/04 追記)

更新停止にも関わらず、多くの方が読んでくださるようなので少しだけ加筆します。
艦これブームを契機に、軍艦プラモデル業界は各種の新商品を発売してくれました。

その中でもフジミ模型の「艦NEXTシリーズ」(および艦NEXT350)は

 ・ 接着剤不要のスナップフィットキット(=パチパチと組み立てるだけで完成する)
 ・ パーツが複数の成型色で分けられ、色塗りをしなくても最低限の外見になる
 ・ よりわかりやすいように工夫された説明書など

と、いわば「軍艦版のガンプラ」と呼ぶべきコンセプトの商品展開を行っております。
「1/700大和」からはじまったラインナップも「1/700武蔵」「1/350島風」「1/700紀伊(!?)」「1/700赤城」「1/700雪風&磯風」「1/700比叡」「1/350雪風」と2017年4月現在順調に充実してきております。

フジミ製でやや大型キットということもあり、ややお値段は高め、パーツ数も多いものとなりますが、最初、あるいは二番目のキットとしてオススメできるものかと思われます。
自分もお金と時間ができれば是非挑戦したいものですorz

参考リンク:艦NEXTシリーズ(FUJIMI模型公式サイト)
参考リンク:艦NEXTシリーズ:1/350 島風(ホビーサーチ様)
(素組やランナー画像も実際のキットがどういうものなのかよくわかります!)


以下に、キット選びで役に立つサイトを紹介します。

HOBBY SHOP M's PLUS(エムズプラス)
プラモデル等を扱う通信販売ショップです。非常に多くの商品を扱ってる上に分類ページが非常にわかりやすいのでプラモ選びが捗ります。さらにキットごとの紹介や解説が詳しく、お店側の並々ならぬ気合を感じます。メーカー公式サイトも見習って欲しいぐらい。キット選びに役立つかと思います。

HOBBY SEARCH(ホビーサーチ)(ミリタリートップページ)
プラモデルやフィギュア、書籍を取り扱う大手通信販売ショップです。商品情報ページに実際のパーツや、組み立て説明書の画像などが充実しています。ただ、カテゴリ分類はされていないので少し分かりにくいです。具体的に欲しいキットが決まっている場合の下調べに非常に役に立つかと思います。

ウォーターラインシリーズキット一覧(Wikipedhia)
ウォーターラインシリーズ(アオシマ、タミヤ、ハセガワ)とシーウェイモデル(フジミ)のラインナップが確認できます。ただし、ピットロード社のものはのっていません。

 おすすめ艦隊プラモデル/おすすめの1/700キット | 艦これ攻略wiki
艦これの攻略wiki中のプラモデル紹介ページですが、こちらもキット解説やプラモデル講座としての情報が充実しています。ホントお世話になりました。


・・・

次回は「実際に作成する上でのポイント」と余力のある初心者や、二隻目に挑戦する人のための「ステップアップ」について紹介したいと思います。おそらく自分にとってはそれが限界であるため、最終回を予定しています。

(2017/04 追記)現在、プラモ製作に取れる時間と場所の余裕がないため、更新停止となっております。
楽しみにしてくださった方には申し訳ありません。