提督「鳳翔さんには流星を装備させて、と…」
鳳翔「あの……私、流星つかえるんですか?」
提督「え?」
鳳翔「…?」
赤城「烈風は知らない子ですけど、美味しいですよ(ぽりぽり」
提督「あああ、ボクの烈風がああああっっっー!!!」

・・・


「艦これ」では航空母艦の艦載機運用能力を語る際は「装備スロット数」と「スロットごとの艦載機の搭載数」が重要ですが、実際の航空母艦の場合、「艦載機搭載数」だけでなく「飛行甲板の長さ」と「最大速力」が非常に重要な要素でした。
今回のコラムではこの二つが何故重要なのかを解説したいと思います。

■ 飛行甲板長と最大速力
航空機が離陸する際には、必要な揚力(=機体を浮き上がらせる力)が得られる速度になるまで滑走する必要があります。また、着陸する際にも機体が減速し、静止するまでの距離が必要です。陸上でこれらを行う場所が「滑走路」です。

そしてこの「滑走路」の役割を海上でするのが航空母艦の「飛行甲板」です。当然、艦載機ごとに必要な滑走距離、制動距離が確保されていなければ発艦も着艦もできません。

また、艦載機が空母から発艦する際には自分の速度だけでなく、空母の航行速度も利用します。
例:
ある艦載機が離陸に必要な揚力を得るための滑走速度が100km/hならば、
60km/hで航行中の空母上から進行方向に発艦する場合、40km/hで走れば良い
合成風力
※無風の場合。なお例示してある数値は適当です
このように自走速度と空母の速度の双方(=合成風力)を利用することで、艦載機は陸上から離陸するより遅い速度、短い滑走距離での発艦が可能です。つまり航空母艦の速力が速ければ速いほど飛行甲板は短くて済む、ということになり、逆に速力が遅ければより長い飛行甲板が必要になる、ともいえます。

■ 艦載機の変化
太平洋戦争開戦の前後で航空技術は著しく進歩し、艦載機は重武装化、航続距離を延長していきますが、その代償として機体は大型化し、その重量はどんどん重くなっていきました。

艦上攻撃機配備自重全備重量
97式艦上攻撃機1937年2,170kg3,800kg
天山艦上攻撃機1941年3,223kg5,200kg
流星艦上攻撃機1942年3,614kg5,700kg
全備重量:燃料や武装、人員などを含めた全体の重さ

機体重量が重くなると発艦に必要な揚力は増すため、航空母艦には「より長い飛行甲板」と「より速い航行速度」が求められ、着艦に必要な飛行甲板長も増します。さらに、日本は発着艦に必要な距離を削減するための装置(発艦では射出機、着艦では制動装置)の技術開発が遅れていました。

このため、小型の空母や低速の商船改造空母などでは大戦後期の高性能な最新鋭艦載機が運用できませんでした。よって、これらの空母は最前線ではなく、旧型の艦載機を搭載し船団護衛(護衛空母)や、輸送艦として運用されます。もっともこの頃には最新鋭機を運用できる空母はおろか、旧型の艦載機ですら不足していくのですが・・・。

以上より、航空母艦の「飛行甲板の長さ」と「最大速力」は「ある艦載機を運用できるか、できないか」を決定する、非常に重要な要素だったと言えます。
余談。
「艦これ」でこれらの空母ごとの艦載機搭載条件を除外したのは「史実の搭載条件を厳密に装備条件に反映してしまうと、艦ごとの優劣差が著しくなるから」だと推測できます。ただでさえ搭載数や装備スロット数で劣る鳳翔や龍驤がさらに彗星以上、天山以上が装備できなかったらと考えると…「艦娘のゲーム」としては正しい判断だと思えます。

■ 参考

正規空母飛行甲板長最大速力最新鋭機対応
鳳翔168.25m ※25kt不可
龍驤156.5m28kt不可?
翔鶴型242.2m34.2kt運用可
雲龍型216.9m34kt運用可。ただし既に積む機体が無
※改装で飛行甲板を延長(180m)するが、外洋航海能力に支障をきたし練習艦に

軍艦からの改装空母飛行甲板長最大速力最新鋭機対応
赤城249.17m30.2kt配備前に喪失
瑞鳳180m28kt運用可

商船からの改装空母飛行甲板長最大速力最新鋭機対応
隼鷹210m25.68kt運用可。ただし難あり
神鷹180m21kt不可
大鷹型180.24m21kt不可

最新鋭機=大戦後期の彗星艦上爆撃機や流星艦上攻撃機を想定
1kt(ノット)=約2km/h



https://www.youtube.com/watch?v=jwkcB-sljr4



ふたつの動画を見比べれrば、陸上と艦上の離陸の違いがだいたいわかるかと。片方はCGですが。